力覚センサとは?種類・仕組み・選び方までわかりやすく解説
この記事のポイント
力覚センサは力とトルクを計測し、ロボットに人のような力加減を持たせる電子部品です。ひずみゲージを用いる電気抵抗式が主流で、1軸から6軸まであり、精密組立や研磨などの作業の自動化に使われます。
「力覚センサという言葉は聞くけれど、仕組みや種類、自社のロボットにどう選べばよいのかがよくわからない」
こうした疑問に答えます。
本記事の内容
本記事の内容
- 力覚センサの意味と基本的な仕組み
- 計測方式や軸数による種類の違い
- 主な用途と失敗しない選び方
力覚センサとは、物体に加わる力とトルクを計測し、ロボットに人のような力加減を持たせる電子部品です。
本記事を読めば、力覚センサの仕組みから種類、用途、選定のポイントまでを順番に理解でき、自社での導入検討に必要な判断材料がそろいます。ここから力覚センサの全体像を具体的に見ていきましょう。
力覚センサとは
力覚センサとは、物体に加わる力とトルクの大きさや方向を計測する電子部品です。人が指先で感じる押す力や引く力、ねじる力を機械で再現し、ロボットに繊細な力加減を持たせる役割を担います。
力覚センサの意味
力覚センサは、複数の向きに作用する力と回転力であるトルクを、リアルタイムに数値へ変換するセンサです。人間は皮膚内部の感覚受容器で押す、引く、ねじるといった力を感じ取っています。力覚センサはこの触力覚を機械的に再現し、ロボットが自分の動作に加わる力を把握できるようにします。あらかじめ決められた動きをなぞるだけの従来のロボットに対し、力覚センサを備えたロボットはその場の力を感じながら動作を調整できる点が大きな違いで、こうした調整の仕組みはロボット制御のなかでも力制御と呼ばれる方式にあたります。
力覚センサの仕組み
力覚センサは、力を受けて変形する起歪体と、その変形量を読み取るひずみゲージの組み合わせで動作します。外部から力が加わると起歪体がわずかに変形し、貼り付けられたひずみゲージの電気抵抗が変化します。この抵抗変化を電気信号として取り出し、力とトルクの数値へ換算する流れです。
得られた数値をロボットの制御にフィードバックすると、力を感じて動作を微調整する力制御が可能になります。この仕組みにより、熟練作業者が手の感覚で行っていた繊細な作業を自動化できる可能性が広がります。起歪体の構造はセンサの性能を大きく左右するため、ビーム式やリング式など用途に応じた形状が使い分けられています。こうして得られた力情報は、人が操作する遠隔操作ロボットにも伝えられ、離れた場所からでも接触の感覚を再現する技術に応用されています。
力覚センサとトルクセンサの違い
力覚センサとトルクセンサは混同されやすいものの、計測できる範囲が異なります。トルクセンサは回転やねじれに伴うトルクだけを計測する専用のセンサです。一方の力覚センサは、力とトルクの両方を複数の軸方向でまとめて計測できます。
| 比較項目 | 力覚センサ | トルクセンサ |
|---|---|---|
| 計測対象 | 力とトルクの両方 | トルクのみ |
| 計測方向 | 複数軸 | 回転軸中心 |
| 得られる情報量 | 多い | 限定的 |
| 主な用途 | 組立や研磨など多様な作業 | 締め付けや回転の管理 |
力覚センサはトルクセンサの機能を包含し、より多くの情報を扱える上位の位置づけです。締め付けトルクの管理だけで足りる場面ではトルクセンサ、力加減を伴う複雑な作業には力覚センサが向いています。
力覚センサの種類
力覚センサは、力を検出する計測方式と、検出できる軸数という2つの観点で分類できます。用途に合ったセンサを選ぶには、それぞれの違いを押さえておくことが役立ちます。
計測方式による分類
力覚センサの計測方式には、電気抵抗式、静電容量式、圧電式、光学式の4種類が代表的です。方式ごとに精度やコスト、応答性が異なるため、作業内容に応じた使い分けが必要になります。
| 計測方式 | 原理 | 特徴 |
|---|---|---|
| 電気抵抗式 | ひずみによる電気抵抗の変化を検出 | 小型で精度が高く応答性も良い |
| 静電容量式 | 電極間の距離変化による静電容量を検出 | 精度が高く温度変化に比較的強い |
| 圧電式 | ひずみで生じる電圧を検出 | 応答性とコストに優れる |
| 光学式 | 模様の変化を光で読み取り検出 | 非接触で計測できる |
電気抵抗式はひずみゲージ式とも呼ばれ、小型で精度が高いことから力覚センサの主流となっています。圧電式は応答性とコストに優れる反面、精度では電気抵抗式や静電容量式に及びません。
軸数による分類
力覚センサは、検出できる力の方向の数によって1軸、3軸、6軸に分かれます。軸数が増えるほど得られる情報は豊富になり、対応できる作業の幅も広がります。
- 1軸力覚センサは一方向の力だけを検出し、ロードセルとも呼ばれます。
- 3軸力覚センサはX、Y、Zの3方向に加わる力を分解して検出します。
- 6軸力覚センサは3方向の力に加え、各軸まわりのトルクも同時に検出します。
6軸力覚センサはX、Y、Zの力とMx、My、Mzのトルクをまとめて計測でき、汎用性が最も高い種類です。ただし構造と信号処理回路が複雑になるため、小型化やコストの面では不利になります。
電気抵抗式が主流となる理由
数ある方式のなかで、電気抵抗式が力覚センサの主流を占めています。理由は、小型でありながら高い精度と良好な応答性を両立できるためです。
ロボットの手先に取り付ける力覚センサは、軽くて小さいほど動作の妨げになりません。電気抵抗式はこの搭載性と計測精度のバランスに優れ、多くのメーカーが採用しています。用途によっては非接触で計測できる光学式や、応答性を重視する圧電式が選ばれる場面もあり、用途に応じた方式選定が性能を左右します。
力覚センサの主な用途
力覚センサは、これまで熟練作業者の手の感覚に頼っていた繊細な作業を自動化する用途で広く使われています。ロボットに力加減を持たせることで、力を感じながら動く作業が可能になる点が導入の狙いです。
製造ラインでの精密組立
製造現場で最も多い用途が、部品の嵌め込みや組立です。数マイクロメートルから数十マイクロメートル単位のわずかな隙間に部品を差し込む嵌合作業では、力覚センサが手先にかかる力を検出しながら位置を微調整します。
ファナックの力制御機能では、ギヤの位相合わせや治具へのワーク取り付けといった精密な作業を自動化しています。柔らかい端子を持つ電子部品をコネクタへ挿入する作業も、壊さない力加減で実行できます。
研磨やバリ取りの自動化
研磨やバリ取りは、対象物の形状に沿って一定の力を保ち続ける必要がある作業です。力覚センサを使うと、手先にかかる外力を検出しながら押し付け力を一定に保てます。
安川電機は、力覚センサを活用して微細な力加減が必要な研磨作業やバリ取りを自動化する事例を紹介しています。曲面や個体差のある対象でも、力を感じながら柔らかく動作できる点が強みです。
協働ロボットでの安全確保
力覚センサは、人と同じ空間で働く協働ロボットの安全性向上にも役立ちます。ロボットが人や障害物に触れた際の力を検出し、動作を止めたり力を弱めたりできるためです。
人とロボットが接触する可能性のある現場では、加わった力をすばやく感知する仕組みが欠かせません。力覚センサによる力の検出は、人との協調作業を安全に進める基盤になり、NVIDIA JetsonのようなエッジAI向けコンピューターが安全機構の演算処理を支える場面もあります。
検査や医療分野での活用
力覚センサの活躍の場は、製造以外の分野にも広がっています。生産ラインでの重量計測による品質検査や、押し込む力を管理する動作確認などが代表例です。
医療分野では、患部の状態を触覚で把握する遠隔診療への応用が期待されています。人手不足が深刻な介護や検査の現場でも、力を感じ取る技術の活用が検討されており、センシングや制御など複数の技術を統合するロボット工学全体の発展とともに応用範囲が広がりつつあります。
力覚センサの選び方
力覚センサは、作業内容に合った仕様を選ぶことで効果を発揮します。定格荷重や精度、搭載性といった項目を、想定する作業と照らし合わせて検討することが選定の基本です。
定格荷重を確認する
まず確認すべきなのが、そのセンサで測れる力の範囲を示す定格荷重です。作業でかかる力が定格荷重を超えると、正しく計測できないだけでなくセンサの寿命が大きく縮む恐れがあります。
導入を検討している作業でどの程度の負荷がかかるかを見積もり、その荷重を余裕を持って計測できる定格のセンサを選びます。過大でも過小でもなく、作業に見合った範囲を選ぶことが大切です。
精度と分解能を見る
繊細な作業ほど、精度と分解能が重要になります。精度は計測値の正確さ、分解能はどれだけ細かい力の違いを読み取れるかを表します。
微小な力加減が求められる嵌合や研磨では、高い分解能を持つセンサが必要です。一方で、大まかな力の管理で足りる作業には、過剰な精度は求められません。作業に必要な繊細さを基準に選びます。
搭載性とコストを踏まえる
力覚センサはロボットの手先など可動部に取り付けることが多いため、小型で軽量であることも選定基準になります。重いセンサは動作の慣性を増やし、ロボットの動きを妨げます。
ただし高精度で多機能なセンサほど、サイズや重量、コストが大きくなる傾向があります。搭載スペースと予算を踏まえ、必要な性能とのバランスが最も良いものを選びます。
主要メーカーから選ぶ
力覚センサは複数のメーカーから提供されており、それぞれ得意とする方式が異なります。実績のあるメーカーから選ぶと、導入後のサポートも受けやすくなります。
| メーカー | 特徴 |
|---|---|
| ワコーテック | 静電容量式の6軸センサDynPickを提供し耐久性に優れる |
| レプトリノ | 6軸力覚センサを幅広く展開する専業メーカー |
| ビー・エル・オートテック | 力とトルクを同時に検出する6軸センサを製造 |
| エプソン | 水晶圧電式を採用しロボットと一体で提供 |
| ファナック | 力制御機能を備え各社のセンサを活用できる |
産業用ロボットを手掛けるファナックやエプソンは、ロボット本体と力覚センサを組み合わせて提供しています。センサ単体を求める場合は、ワコーテックやレプトリノといった専業メーカーが選択肢になります。
まとめ:力覚センサはロボットに力加減を与える基幹部品
力覚センサは、力とトルクを計測してロボットに人のような力加減を持たせる電子部品です。本記事では、力覚センサの意味と仕組み、電気抵抗式をはじめとする計測方式や軸数による種類、精密組立や研磨といった用途、定格荷重や精度を軸にした選び方までを解説しました。
本記事のポイントをおさらいします。
本記事のポイント
- 力覚センサは力とトルクを計測しロボットに力加減を与える
- 計測方式では小型で高精度な電気抵抗式が主流になる
- 定格荷重と精度と搭載性のバランスで選ぶことが重要になる
力覚センサの全体像を押さえたことで、自社の作業に適したセンサの検討や、ロボット自動化の第一歩を踏み出すための土台が得られたのではないでしょうか。
力覚センサの導入やロボット活用について詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。
力覚センサに関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
Robot With編集部は、ロボット・フィジカルAI領域の専門メディアです。物流・製造・サービスなど幅広い分野のロボット技術や導入事例、市場動向を調査・発信し、企業の導入検討や意思決定に役立つ信頼性の高い情報を提供しています。
監修者
リサーチチーム
Robot With リサーチチームは、ロボット・フィジカルAI領域の専門調査チームです。国内外のメーカー情報や市場動向、技術資料、公的データをもとにファクトチェックと内容監修を行い、企業の導入検討に役立つ正確で中立的な情報を提供しています。
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