協働ロボットの安全規格・ISOの条件と手順を解説【事故事例】
この記事のポイント
安全柵なしで協働ロボットを運用するには、ISO 10218に代表される協働ロボットの安全規格や労働安全衛生法に基づく厳格なリスクアセスメントの実施と、安全距離の確保および250mm/s以下の速度制限といった要件を満たす具体的な安全対策の適用が必須です。
「協働ロボットの安全規格が複雑で、安全柵なしで運用するための条件が分からない。最新の法規制を正しく理解し、リスクアセスメントの手間やコストを最小限に抑えて導入を成功させたい」といった悩みはありませんか。
こうした疑問にお答えします。
本記事の内容
- 最新の協働ロボットの安全規格であるISOや労働安全衛生法の要件
- 安全柵なしの活用に必要な安全対策や安全距離の考え方
- リスクアセスメントの具体的な実施手順と事故事例の防止策
協働ロボットを安全かつ円滑に導入するには、ISO 10218やISO/TS 15066といった国際的な協働ロボットの安全規格に基づいた適切なリスクアセスメントの実施が不可欠です。人の接触を前提とする場合は、速度を250mm/s以下に制限するなどの具体的な安全対策も欠かせません。
2026年時点の最新基準を把握することで、生産効率を維持しながら社内の安全基準をクリアし、スムーズにプロジェクトを推進できます。リスクアセスメントの事例や適切な運用方法を知りたい方は、ぜひ最後まで読み進めてください。
協働ロボットに適用される安全規格
協働ロボットの導入による工場自動化に際して、最も重視すべきは作業者の安全確保です。従来の産業用ロボットと異なり、安全柵なしでの運用が想定されるため、遵守すべき協働ロボット安全規格は多岐にわたります。
現在は2026年ですが、ロボットの安全基準は国際規格(ISO)、日本産業規格(JIS)、国内法規の3層で構成されています。これらを理解し、協働ロボットリスクアセスメント事例を参考に危険源を特定することが、安全な運用の第一歩です。
ISO規格(国際標準化機構)
協働ロボットに関する世界共通のルールを定めているのが、ISOによる協働ロボットの安全規格です。2025年に大幅な改訂が行われ、最新の技術動向を反映した内容へと進化しました。
| 規格番号 | 内容・役割 |
|---|---|
| ISO 10218-1:2025 | ロボット本体の設計・製造上の安全要求(メーカー向け) |
| ISO 10218-2:2025 | ロボットシステムの統合に関する安全要求(インテグレータ向け) |
| ISO 12100 | 機械安全全般の基本原則とリスクアセスメント手法 |
| ISO/TS 15066 | 協働運転の技術仕様(2025年改訂でISO 10218-2へ統合) |
2026年現在の最重要規格は、旧来のISO/TS 15066を統合したISO 10218:2025です。ロボットのクラス分類が導入され、エンドエフェクタの形状まで考慮した包括的な基準となっています。
JIS規格(日本産業規格)
日本国内でロボットを運用する場合、ISO規格を翻訳したJIS規格が直接的な指針となります。これらは国内のシステムインテグレータやユーザーが共通言語として使用する基準です。
- JIS B 8433-1 / -2:産業用ロボットの安全要求事項を規定
- JIS B 9700:リスクアセスメントの具体的な手順を規定
JIS規格に基づいた設計を行うことで、国際基準と同等の安全性を国内現場でも担保できます。ただし最新のISO動向とタイムラグが生じる場合があるため、常に両方を確認することが重要です。
労働安全衛生法に基づく規制
日本国内で稼働させる際、法的拘束力を持つのが労働安全衛生法および労働安全衛生規則です。協働ロボット安全対策として、特に関係が深い項目が定められています。
- 労働安全衛生規則 第150条の4:産業用ロボットの運転時における危険防止を義務付け
- 厚生労働省通達:リスクアセスメント実施を条件に、協働ロボット安全柵なしの運用を容認
- 機能安全活用実践マニュアル:国際規格に基づいた具体的な安全対策手法を解説し、高出力なパナソニックの溶接ロボットなどの産業用ロボットでも機能安全を適用して安全性を確保する手順を示しています。
安全柵なしで導入するには、協働ロボットの安全距離の確保や、250mm/s以下の速度制限などの検討が必要です。協働ロボット事故事例を学び、労働者に危険が生じないことを客観的に証明するプロセスが欠かせません。
協働ロボットの安全規格を満たす安全対策
協働ロボットの導入を進める上で、前章で触れた安全規格への適合は避けて通れません。特に重要なのは、リスクアセスメントによる危険源の特定と、それに基づいた具体的な安全対策の実施です。
ISO 10218やISO/TS 15066の要件に沿い、安全距離の確保や速度制限、接触時の許容応力の管理など、システム全体で対策を講じることが求められます。以下では、代表的な4つの観点から具体的に解説します。
安全距離の確保
協働ロボットと作業者が同じ空間で活動する場合、適切な安全距離を保つ必要があります。これはロボットの動作によって作業者が負傷するリスクを最小限に抑えるためです。
安全距離の確保には、外部センサを活用して距離に応じた動作制限を行う速度・距離監視の手法が有効です。セーフティレーザスキャナなどを用い、人とロボットの距離に基づき安全に停止や減速を制御します。
安全距離の算出に必要な要素は以下の通りです。
- ロボットの最大速度と停止距離
- 安全センサの検出範囲および応答時間
- 作業者の想定移動速度
- ロボットシステムの制御遅延
ISO/TS 15066では、これらを組み合わせた計算式によって接触前にロボットが停止するための距離を定義しています。正確な計算により、安全性を保ちながら高い生産性を維持できます。
安全柵の設置条件
協働ロボットであっても、常に安全柵が不要になるわけではありません。安全柵の設置が必要かどうかは、実施したリスクアセスメントの結果に従って判断します。
安全柵なしで運用するための条件を以下の表にまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| リスク低減の証明 | 危険源が除去されリスクが許容レベル内であること |
| 協働モードの適用 | 速度・距離監視や力・出力制限が機能していること |
| 周辺環境の安全性 | ワークやツールに鋭利な部分や高温部がないこと |
ロボット本体が安全でも、扱うワークが刃物のように鋭利な場合や高速で運搬する場合は注意が必要です。その結果、製造の自動化ラインの構築において、物理的な安全柵やインターロック付きガードの設置が必須となる場合があります。
動作時の速度制限
ロボットが人と接触する可能性がある環境では、動作速度を制限して衝撃エネルギーを抑えなければなりません。これにより、万が一の接触時にも作業者の安全を確保できます。
速度制限の制御には、主に2つのアプローチが用いられます。
- 力・出力制限モード:接触時の衝撃が規定値を超えないよう速度を制限する。
- 速度・距離監視モード:人の接近に合わせて段階的に減速し、一定距離で停止させる。
作業者が可動範囲内に立ち入る現場では、250mm/s以下の低速動作がひとつの目安です。実際の運用においても、ワークの質量や形状を加味した厳格な速度設定が欠かせません。
接触時の許容応力
力・出力制限を用いて人と接触する運用を行う場合、接触時の力を規格内に収めることが求められます。ISO/TS 15066では、人体を29の部位に分け、部位ごとに痛みを感じない許容値が定義されています。
接触時の検証は以下のステップで進めます。
- ロボットが接触する可能性のある人体の部位を特定する
- 規格に定められた最大圧力と最大力を参照する
- 圧力測定器を使用し、実際の動作環境で計測値を検証する
外装へのクッション材採用や角のない設計も、許容応力をクリアするために有効です。例えば、ファナックの協働ロボットや安川の協働ロボットなどのように、丸みを帯びたアーム設計やソフトカバーを採用し、ぶつかった際の圧力が基準値以下であることを実測データで証明することが、最新の安全規格における重要事項です。
協働ロボットの安全規格に基づくリスクアセスメントの手順
協働ロボットを安全柵なしで導入するには、国際的なISO規格や労働安全衛生法に沿った正確なリスクアセスメントが欠かせません。特に、最新のISO 10218:2025に準拠した安全設計を行うことが強く求められています。
リスクアセスメントの実施に際しては、ISO 12100の基本原則に従い、次の5つのステップで体系的に進めることが重要です。
① 機械の仕様を決定する
リスクアセスメントの第一歩として、機械類の制限を含む協働ロボットシステムの仕様を細かく決定します。ロボット単体の性能だけでなく、実際のシステム全体の使用条件を定義しなければ、正確なリスクを見つけることができないためです。
具体的には、以下のような制限事項を細かく整理していきます。
- 意図する使用:パレタイズやねじ締めなどの作業内容と具体的な手順
- 空間上の制限:可動範囲や周辺設備との安全距離、および作業者の立ち位置
- 時間上の制限:稼働時間やタクトタイム、定期的なメンテナンス頻度
- その他の制限:扱うワークの重量や形状、使用するエンドエフェクタの特性
ロボットと周辺機器、さらに人の動きを網羅した仕様を固めることが、次項の危険源特定において不可欠な土台となります。
② 危険源を特定する
仕様が決定したら、運用上で想定されるすべての危険源を特定します。人とロボットが同じ空間を共有する現場では、従来の産業用ロボットとは異なる協働ロボット安全対策が必要になるため、細心の注意を払いましょう。
特定すべき主な危険源の例を以下の表にまとめました。
| 危険の種類 | 具体的な事例 |
|---|---|
| 機械的危険源 | ロボットアームと周辺設備の柱の間に人が挟まれる、または巻き込まれるリスク |
| 接触による危険源 | ロボットアームの動作中に、作業者の頭部や胸部へ衝突する打撃リスク |
| 鋭利物による危険源 | 鋭利なワークやエンドエフェクタとの接触による切傷、突き刺しのリスク |
| システム的危険源 | セキュリティ侵害による予期せぬ動作や、制御プログラムのミスによるリスク |
これらのリスクを目視や図面で確認し、実際に発生した事故のケースも踏まえながら、保守から廃棄までの全ライフサイクルを網羅して洗い出します。
③ リスクを見積もる
危険源の特定後は、個々のリスクの大きさを算出します。一般的に、リスクの大きさは危害のひどさと危害が発生する確率を組み合わせて判断しましょう。
見積もりを行う際は、以下の要素を慎重に考慮します。
- 危害のひどさ:かすり傷から生命に関わる重傷まで、負傷の程度を想定する
- 危害の発生確率:人が危険領域に入る頻度や、機械の故障率、誤動作の可能性
- 回避の可能性:250mm/s以下の速度制限などによって危害を避けられるか
2026年現在の安全基準では、サイバーセキュリティ要件や最新のクラス分類も考慮に入れます。多角的な視点からリスクの度合いを数値化し、段階的に評価を行うことが求められます。
④ リスクを評価する
見積もったリスクが、あらかじめ設定した許容可能なレベルに収まっているかを厳格に判断します。このステップによって、さらなるリスク低減策が必要かどうかの結論を出してください。
判断の基準となる重要なポイントは以下の通りです。
- 安全柵なしで運用しても、労働者に危険を及ぼさないレベルのリスクであるか
- 最新のISO 10218:2025およびISO 10218-2が定める安全要件をクリアしているか
- 対策を施した後に残るリスクを、組織として許容できると判断できるか
評価の結果、リスクが許容範囲を超えている場合は、次のステップであるリスク低減策を実施し、再び見積もりからやり直す必要があります。
⑤ リスク低減策を実施する
リスクが許容できない場合は、優先順位が高い順に保護方策を実施します。ISO 12100で規定された3ステップメソッドに従い、以下の順序で対策を講じることが義務となります。
- 本質的安全設計方策:ロボットの角を丸くする、または協働ロボットの安全規格が定める速度を守るよう物理的に制限する根本的な対策
- 安全防護および付加保護方策:セーフティレーザスキャナによる距離監視や、監視されたセーフティストップの実装
- 使用上の情報:警告ラベルの貼付や作業者への安全教育、マニュアルの整備
協働ロボット特有の対策として、ISO/TS 15066から統合された接触力制限や安全距離の確保などの機能を活用しましょう。リスクアセスメント事例を参考にこれらの方策を適用し、すべてのリスクが許容可能であることを確認して、初めて安全な運用が可能になります。
協働ロボットの安全規格対応を効率化するポイント
人手不足を解消する手段として、協働ロボットの導入は今後さらに加速すると見込まれます。ただし安全柵なしで運用するには、複雑な安全規格への適合と適切なリスクアセスメントが欠かせません。
日本国内でも労働安全衛生規則に基づき、適切な協働ロボット安全対策を講じる義務があります。最新の規格に準拠しつつ効率的に導入を進めるため、以下の3つのポイントを確認しましょう。
過去の事故事例の分析
安全なシステム構築の第一歩は、過去の協働ロボットの事例として蓄積されたトラブル事例や危険源を分析し、リスクを特定することです。特有の接触リスクを事前に把握しなければ、本質的な安全設計は行えません。
協働空間で想定される主なリスクをまとめました。
- ロボットアームと周辺什器の間に作業者が挟まれる
- 高速動作するロボットと作業者の突発的な衝突
- 把持している鋭利なワークとの接触
リスク低減には、システム全体のレイアウトを含めた対策が必要です。ISO 10218-2に基づき接触の可能性を具体的に洗い出せば、後戻りのない設計が可能になります。
チェックシートの活用
効率的な規格対応には、リスクアセスメントの手順を標準化したチェックシートの活用が有効です。個人の経験に頼らず、ISO 12100に基づいた網羅的な確認を短期間で実施できます。
リスクアセスメントで確認すべき主要項目は以下の通りです。
| 確認カテゴリ | 主なチェック項目 |
|---|---|
| 機械本体の制限 | 動作速度、可搬重量、停止距離 |
| ワーク・ツールの特性 | 形状の鋭利さ、重量バランス、温度 |
| 作業環境・運用 | 作業者の接近頻度、非常停止ボタンの配置 |
| 安全保護方策 | 力・出力制限の設定、安全距離の確保 |
項目をリスト化して妥当性を検証すれば、残留リスクを客観的に評価できます。前章で解説した5つのステップ(仕様決定、危険源特定、リスク見積り、リスク評価、リスク低減策の実施)に沿ってチェックシートを作成すれば、プロセスの可視化と関係者への説明コスト削減を同時に実現できます。
安全認証の取得
プロジェクトを完遂させるには、各種安全認証の基準に適合している証明が必要です。現在の国際基準では、以下の規格への適合が事実上の必須条件となります。
- ISO 10218-1:2025:ロボット本体の安全要求
- ISO 10218-2:2025:システム構築の安全要求
- ISO 13849-1:制御システムのパフォーマンスレベル
安全柵なしで稼働させるには、距離や速度監視、力と出力の制限が適切に機能している必要があります。協働ロボットの安全規格が定める速度基準である250mm/s以下の制御を含め、システム全体での妥当性確認が重要です。
最新のISO 10218への準拠は今後も継続的に求められます。規格に基づいた認証要件をクリアすることで、法規制の遵守と生産性の維持を両立した自動化ラインが構築できます。
まとめ:協働ロボットの安全規格を理解しましょう
協働ロボットの安全規格を正しく把握することは、現場の安全と生産性を両立させるために欠かせません。ISO 10218やISO/TS 15066といった国際規格に基づき、250mm/s以下の速度制限や安全距離の確保など適切な安全対策を講じることが求められます。
リスクアセスメントの事例を参考にしながら、事故事例を防ぐためのリスク低減策を検討してください。安全柵なしでの運用を実現するには、法的な要件を満たした上で慎重な設計が必要となります。
本記事のポイント
- ISO 10218やISO/TS 15066など協働ロボットの安全規格の遵守が必須
- リスクアセスメントにより危険源を特定し適切な安全対策を講じる必要がある
- 2026年現在の基準に沿った専門的な知見がスムーズな導入を支える
正しい知識によって安全要件をクリアすれば、生産効率の最大化が期待できるでしょう。実務への適用に不安がある場合は、専門家のアドバイスを受けるのが近道です。
協働ロボットの安全規格に関するよくある質問
参考文献
執筆者
編集部
Robot With編集部は、ロボット・フィジカルAI領域の専門メディアです。物流・製造・サービスなど幅広い分野のロボット技術や導入事例、市場動向を調査・発信し、企業の導入検討や意思決定に役立つ信頼性の高い情報を提供しています。
監修者
リサーチチーム
Robot With リサーチチームは、ロボット・フィジカルAI領域の専門調査チームです。国内外のメーカー情報や市場動向、技術資料、公的データをもとにファクトチェックと内容監修を行い、企業の導入検討に役立つ正確で中立的な情報を提供しています。
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